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マスターの小噺。 / 収蔵区分へ
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MASTER’S KO-BANASHI / Vol.02

マスターの休日。

Instagram Vol.02|LONG VERSION

AquaBar Linden · BEYOND THE GLASS, THE NIGHT DEEPENS.

マスターの小噺。Vol.02 マスターの休日。Instagram LONG VERSION 正式カバー。月夜の窓とハンモック、コーヒーと古書。

定休日の月曜日。
コーヒーから始まり、ゲームをして、知らないことを調べて、
料理をして、ハンモックから空を眺める。

BARに立っていない日のマスターは、
何を見て、何を考えているのか。

Instagram「マスターの小噺。Vol.02」で少しだけ触れた、
休日の続きを。


「休みの日って、何してるんですか?」

たまに聞かれます。

バーテンダーの休日というと、他のBARへ飲みに行ったり、
酒屋を巡ったり、カクテルの研究をしたり。

そんな一日を想像する方もいるかもしれません。

実際は、もう少し普通です。

Lindenの定休日は月曜日。

休日でも、起きる時間はほとんど変わりません。
食事の時間も同じ。

一日は、いつものコーヒーから始まります。

掃除をして、洗濯をして。

これは休日だからするのではなく、いつものこと。

全部終わって部屋が整うと、
ようやく休日が始まったような気がします。

私は、自宅にいるのが好きです。

理由はたぶん単純で、
ここが完全に私の秩序の中にあるから。

あるものは自分が気に入ったものばかりで、
気に入らないものが目に入らない。

何がどこにあるかも、だいたい決まっています。

たぶん、目をつむっても生活できます。笑

だから休日には、あまり予定を入れたくありません。

ただし、

「休日をどう過ごすか考えるのは好きです。」

ゲームをして。
アニメを見て。
夕食を作って。
半身浴をして。
ハンモックで涼んで。
夜には映画を一本。

そういう予定なら、喜んで立てます。

外へ出る用事がある日でさえ、

「何時までに帰れば、そのあとこれができるな」

と考えている。

出かける前から、帰ることを考えています。笑

ゲームやアニメを見るときは、
わりとしっかりその世界に入ります。

ところが、たまに妙なところで引っかかる。

BGMがいい。

この光の感じがいい。

この空気、Lindenに合いそうだな。

そう思った瞬間、
頭の中に店の風景が出てきます。

そこに置いてみたいものまで
浮かんでくることもある。

すると気になって、探し始める。

本当ならメモだけ残して
ゲームに戻ればいいんです。

でも、

「だったら、こうした方がいいんじゃないか」

「こっちも変えた方が合うな」

と、その先まで考え始める。

気づけば休日に、店のことを詰めている。

凝り性というのも、考えものです。笑

でも、これはバーテンダーになってから
身についた癖ではありません。

昔から、気になるものを
そのままにしておくのが苦手でした。

子どもの頃、

「日本のちょうど裏側には、
どんな国があるんだろう?」

と気になったことがあります。

調べてみたら、アルゼンチン。

普通なら、

「へえ、アルゼンチンなんだ」

で終わるところです。

私はアルゼンチン大使館に手紙を書きました。

……昔から、あまり変わっていないようです。笑

ちなみに、この話にはまだ続きがあります。

以前、電子書籍の方に書いていますので、
まだ読んでいない方はぜひそちらで。

そんな性格なので、
休日に見るものもかなりバラバラです。

YouTubeでよく見るのは、
言葉のないブッシュクラフト。

森の中で、黙々と手を動かしている。

プロの大工さんが仕事をしている動画も好きです。

壊れたジャンク品を分解して、直して、
また動くようにしていく動画もよく見ます。

もちろんゲーム配信も見る。

最近は、なぜか物理学まで加わりました。

相対性理論とか。

これまで学問として触れてきたものといえば、
ほとんど経済学だった私が、
休日に相対性理論を見ています。

人間、何に興味を持つようになるか
分からないものです。

養老孟司先生の話を聞くこともあります。

聞いていると、

人間はずいぶん自分たちの都合を中心に
世界を見ているんだな、と
気づかされることがあります。

そして、

「自分もそうだな」

と思う。

そんなことを考えたあとで、
植物や魚を眺めていると、
少しだけ見え方が変わったりもします。

もっとも、
相対性理論を理解した気になった次の日には、
普通にゲームをしています。

休日なので、それくらいでいいのでしょう。笑

昔から、こういう
「その人なりの世界」に
惹かれるところがあります。

シャーロック・ホームズも好きで、
原作はすべて読みました。

中でも好きなのが、
ロバート・ダウニー・Jr.とジュード・ロウの
映画『シャーロック・ホームズ』の世界。

ホームズの部屋には、
いろいろなものがあります。

一見するとガラクタ。

でも、本人にとっては研究のためのものだったり、
何かの手がかりだったり。

かと思えば、
本当にただのガラクタだったりする。笑

他人には無秩序に見えても、
本人の中ではちゃんとつながっている。

あの感じが好きです。

そう考えると、
Lindenにも少し似たところがあります。

水景に使う石や流木。

今は使っていなくても、
形が良ければ残してある。

いつか別のレイアウトで
使えるかもしれないからです。

その横には、
自分では選ばなかったものも増えていきました。

お客様からいただいた
仮面ライダーの色紙イラスト。

北海道土産のイカ徳利。

私はメジャーリーグをほとんど観ないのに、
LAから来たお客様にいただいたチームペナント。

数年前のクリスマスに
常連のお客様からいただいたスノードームは、
冬になると今でもカウンターに戻ってきます。

こうして長く店をやっていると、

自分で選んだ覚えのないものまで、
いつの間にかこの場所の風景になっていきます。

もっとも。

自宅までホームズの部屋のように
なっているわけではありません。

あの天才の域には達していないせいか、
こちらはきれいに整っています。笑

家具ひとつ選ぶにも、
私は結構時間がかかります。

その代わり、一度気に入ると長い。

学生時代から着ている服もあります。

革靴は磨くこと自体が好きなので、
手入れをしながら長く履きます。

ゲームをするデスクの周りには、
好きなゲームやアニメのフィギュアやグッズ。

音響機器にも、
20歳くらいの頃から使っているものがあります。

音に興味を持ったきっかけは、
どこかで聴いたMcIntoshでした。

低音を聴いて、

「音って、こんなに違うんだ」

と驚いた。

とはいえ、当時は学生です。

同じような環境を一式揃えられるはずもなく、
自分に手が届く範囲で選んだのが
BOSEのCompanionでした。

その頃に買った音響機器の中には、
今でも現役のものがあります。

だから映画を見るなら、
音もちゃんと聴きたい。

でも映画は、もう少しあと。

夕方になれば、夕食を作ります。

休日は少しだけ手のかかるものを。

豪華なものを作るという意味ではありません。

火にかけたら、
その場を離れられないような料理です。

営業のある日は、
このあと店へ行く時間があります。

でも今日は、火の前に立っていてもいい。

音楽を流して、
火加減を見ながら作る。

ちなみに休日だからといって、
お酒を飲むことはほとんどありません。

そのあたりは、Vol.01で書いた通りです。

食事が終わったら、半身浴。

ここではYouTubeを見たり、
アニメを見たり。

ブッシュクラフトを見ていたはずが、
大工仕事になり、
ゲーム配信になり、
気づけば相対性理論。

私の視聴履歴だけを見ても、
たぶん何をしている人なのか
分からないと思います。

風呂から上がったら、
ハンモックで少し涼みます。

『クロノ・トリガー』の
「風の憧憬」のピアノアレンジ。

あるいは、
ケルト系のインストゥルメンタル。

ハンモックに揺られながら外を見ると、
雲がずいぶん速く流れている日がある。

月を見て、

「そろそろ満月だったかな」

と気になって
月齢を調べることもあります。

雨の日は、音楽を止めます。

雨音だけで十分だからです。

窓を開けると、
これがなかなか気持ちいい。

それでつい全開にしてしまう。

ところが雨というものは、
こちらの都合に合わせて
一定には降ってくれません。

急に強くなる。

そうなると、
ハンモックから飛び起きて
窓を閉めに行きます。

……風情は長く続きません。笑

窓から入る風が少し冷たくなってくると、

「ああ、もう秋だな」

と思います。

すると、

今年の秋は何を漬けようか。

そろそろ季節のカクテルを考えようか。

そんなことが、
自然と頭に浮かんでくる。

ゲームのBGMから
店の風景が浮かぶように。

雨音を聞いて窓を開けるように。

夜風が変われば、
次の季節の酒を考える。

私の中では、
それぞれがそれほど離れていないのかもしれません。

そして夜。

ようやく映画です。

洋画を見ることが多く、
クリストファー・ノーラン監督の作品も好きです。

昔から、
時間を行き来するような物語には惹かれます。

映画は基本的に一本、ちゃんと見る。

ただ、知らない言葉が出てきたり、
実在する酒のボトルが映ったりすると、
やっぱり気になる。

そして調べる。

子どもの頃に
アルゼンチン大使館へ手紙を書いた人間なので、
この辺はもう仕方ありません。笑

一本見終わると、
少しその余韻の中にいます。

続編があれば、
そのまま見てしまうこともある。

あれだけ休日の過ごし方を考えていたのに、
好きなものには簡単に予定を崩されます。

そうしているうちに、深夜になります。

そういえば、

「マスターの小噺。」を出しているのは火曜日です。

Lindenの定休日は月曜日。

だからこの小噺は、

月曜日を一日過ごした、その深夜。

休日の余韻がまだ残っている時間に
書き上げることが多かったりします。

「そして今も、ちょうどそうです。」

コーヒーから始まった一日が終わって。

好きなものを見て、
知らないことを調べて、
音楽を聴いて、
空を眺めて、
映画を一本見て。

その余韻の中で、

今度はこうして文章を書いています。

書いているうちに、

次は何を仕込もうか。

店で試してみたいことがあったな。

そんなことも、
少しずつ思い出してくる。

一日好きなことをして過ごしているうちに、

気づけば自然と、

明日からのカウンターへ戻っていく。

そんな月曜日も、

そろそろ終わります。

明日になれば、
また店の灯りをつけます。

さて、今夜も一杯。


MASTER’S KO-BANASHI ARCHIVE
LONG VERSION|Vol.02

Instagram「マスターの小噺。」で公開した短編をもとに、その背景や、投稿では語りきれなかった話を残していくLONG VERSION。

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